離婚から

 著者は、英国をはじめ何か国かで離婚からの立ち直りをサポートしてきた人物で、自身も離婚経験を持つ。そして、本著は離婚からの回復のための具体的かつ実践的な方法を手引するものである。

同著において「ありそうでない」のは、離婚に関する聖書の引用や離婚についての聖書の教理、信仰による感動的な回復の証しなど。それは、同著が未信者をも対象としているからだ。このことは、未信者の離婚経験者の支援にも、また、伝道にも用いられる書物であることを意味する。本著の根底には、言語化されていないが、明確な聖書的価値観がある。それゆえに、未信者の方も、間接的に福音に触れ、福音の力と恵みを体験していただくことができるだろう。

 一方で「なさそうである」のは、子どもへの接し方、法律問題への対処、さらには、「エクササイズ」と「身につけたいスキル」など。驚くほど、実際的かつ具体的なのだ。目指しているのは、内面的な立ち直りに留まらない、社会面、人間関係面も含めた全人格的回復なのだ。同著に導かれ、起こった事実を認め、自分に向き合う当事者は、様々な実践を重ね、スキルを獲得することによって、着実に回復に向かっていく。

 さらに「ありそうで、予想以上にある」のは離婚からの回復に向かわせる明確なプロセスと回復への大きな希望である。当事者は、離婚前より豊かな人生が可能だという驚くべき希望を持って、回復の階段を一歩ずつ上っていくことができる。 一方、支援者には、離婚経験者の深い悲しみや苦しみを深く理解し、心からの同情と強い支援の思いが与えられるだろう。

一見すると、「離婚からの回復マニュアル」や「離婚後カウンセリグプログラム」のような印象を受けるかもしれない。しかし、多くの事例が記されており、読者はそれらに自らを重ね合わせ、血の通ったものを感じながら、回復の道を歩むだろう。

 大切なことは、専門家でなくても、支援できるということだ。助け手として支えたいとの思いがあり、同著に真摯に学び、実践するなら、有効な支援ができるのだ。

 教会に集う離婚経験者、とりわけクリスチャンとして歩み始めて以降に離婚に至った方々から、聞こえてくるのは、交わりの中での疎外感。「離婚は罪」との断罪的な言葉に傷を受け教会を移るケースも少なくないようだ。接し方がわからず戸惑う姿や「そっとしておこう」との気遣いが逆に疎外感につながることも。

 教職者も信徒も、愛の配慮はできても、回復に向けての積極的な支援はできていないのが現状ではないだろうか。しかし、聖書的な指針と有効で具体的な手引きがあれば、それは可能となる。同著はまさにそれを可能とする。

 離婚経験者への積極的支援の道を切り拓く1冊として、一読を、いや、教会内外での活用をお勧めしたい。

評・水谷潔=春日井聖書教会・協力牧師

『離婚から立ち直る 心の傷と痛みからの解放』
エリック・カステンスキールド著、立山千里・高辻美恵訳、いのちのことば社、2,160円税込、四六版

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