韓国教会は1907年に平壌で起きたリバイバルから今日まで目覚ましい発展を遂げてきた。その一端を担ったのが金相福(キム・サンボク)博士といっても過言ではない。金博士は組織神学者、かつ一教会の牧会者として理論と実践をもって次世代のリーダーを訓練してきた人物である。168冊のリーダーシップの蔵書を持ち、心を注いできたこのテーマについての造詣を、今回日本の教会と分かち合ってくれたのが本書である。

 金博士の作品でいつも感じるのは、書き手と読者の距離の近さである。一つの項目を理論的に展開した後、自身の体験談が続くので、理論が具体的に理解できる。エピソードの中には感動的な場面も、4・19事件の体験など息を飲むような場面も、また、先生でも? と思うようなほほえましい失敗談もある。読者は読みながらあたかも、金博士がやさしい笑顔で目の前で語ってくれているような錯覚になる。なにか自分も師から直接リーダーシップ訓練を受けているような感覚である。

 本書では多くの頁がダビデのリーダーシップの分析に費やされているが、それは「ダビデが長所も短所もある普通の人」だからだという。師はダビデから、牧会者に必要な要素は、霊性、知識、人格、技能、リーダーシップと言っているが、それはまさしく金博士の生き方そのものだとも思う。ダビデが神に用いられた理由が項目ごとに、自分の証しを織りなして語られていくのを読んで、自分の名前に、デビッド金相福と付けた意味が解る気がした。

 本書の最後に加えられている彼の人生の証しは圧巻である。母親の祈りと信仰第一の姿勢でたたき上げられた生い立ちから、日帝時代に妥協せず命を落とした主任牧師朱基徹(チュ・キチョル)牧師に影響をうけた彼の人生の背景を知ると、本書の前部分のリーダーシップの教えが、改めて大きなインパクトを与えてくれる。今、励ましと示唆を必要とする日本のリーダーには必読の書である。

評・高見澤栄子=韓国・トーチトリニティ神学大学院宣教学教授

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