本書は医師であり伝道者でもある黒鳥偉作先生が、恩師の精神科医平山正美先生(故人)から学ばれた「信仰と医療哲学」を受け継ぎ、それをご自身の信仰と臨床を通してより確かなものにされていかれた道筋とその結実が記されたものである。その中核をなすものは《病を担うイエスさま》への信仰であり、これを主軸にして第一部には四つの論稿が載せられている。
最初にイザヤ書53章の「苦難の僕」の中に見られる《病を担うイエスさま》が取り上げられているが次の言葉が印象的だ。「癒しや赦しの奉仕を行う牧会者や医療者の中には《病を担うイエスさま》によって導かれた病人のように、自ら病を担いながら素晴らしい働き、癒しを行っている方がたくさんおられます」。
これは病を担っておられる方々にとって大きな慰めである。
続いてパウロの担った「とげ」に触れ、その苦難の中にも《病を担うイエスさま》がおられ、またヨブの苦難も《病を担うイエスさま》の信仰の視座と響きあうという、病と信仰の関係についての深い考察がなされている。特に印象的な考察は安息日に関する言及である。黒鳥先生は「安息日においてこそ、私たちは病という重荷を降ろし」、「病と距離をとり」、「《病を担うイエスさま》の存在を知ることが、現代において癒しと救いになりえる」と言われる。これはイエスが安息日に病を癒やされた出来事についての洞察からくる新鮮なメッセージである。
第二部は平山先生との出会いとそこから学ばれたことが記されているが、ここは「共苦の思想」が語られ興味深い内容となっている。続いて極めて自然に連動して、あの『傷ついた癒し人』の著者であるヘンリ・ナウエンが紹介されているが、ナウエンは平山先生が晩年に深い関心を持たれていただけに「病を担うイエス」を考える上で重要な論稿である。本書は病気はもとより人間の苦悩について洞察を深めたい方々にぜひ読んでいただきたい一冊である。
評 堀 肇=日本伝道福音教団・鶴瀬恵みキリスト教会牧師

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