廃炉、放射能問題、様々な分断・・・。東京電力福島第一原発事故がもたらした課題は、広く、長期にわたる。この地で支援と宣教に努める住吉英治氏(勿来キリスト福音教会・双葉希望キリスト教会 牧師)が震災・事故11年を前に課題と希望について寄稿する。

 

こちらも → 【3.11特集】福島 帰還・移住者らと 双葉希望キリスト教会 住吉英治2022年3月10日

 

福島第一原発の視察・座談会に参加して〜原発の墓場〜

私は2019年12月7日と2020年2月15日と2回、経済産業省資源エネルギー庁主催の「福島第一原子力発電所視察・座談会」に参加しました。

 

発電所構内を多核種除去設備(ALPS)、1〜4号機原子炉建屋外観の俯瞰(ふかん)、サブドレン設備、固体廃棄物貯蔵庫などをバスで約60分かけて視察します。

 

1〜4号機建屋の前で約10分降車します。私のメモによれば、地下水では110μSv/h、車内でも37.2~46.5μSv/hという数字でした。

 

視察の後、参加者と東電職員を含め座談会が持たれました。職員の説明を受け、質疑応答、感想の時を持ちました。

 

私が視察をした率直な感想は“原発の墓場”ということでした。大小にもよりますが、一端事故を起こすと取り返しがつかなくなり、廃炉に追い込まれ、そこは墓場と化し、莫大な費用と日数がかかります。つらいのは、それが生産性のない作業だということです。

 

 汚染処理水海洋放出〜“フクシマは死ね”

 

政府が汚染処理水を海洋放出すると言い放った時、私には“フクシマは死ね”と聞こえました。

昨年4月、当時の政府・菅義偉政権は、処理水を2023年春に海洋放出する方針を決めました。その理由は、「23年春頃までに既設のタンク1061基(計約137万トン)が満杯になる。タンクを増設し続ければ今後の廃炉作業に影響しかねない」ということです。

一斉に県内外の漁業組合や県森林組合、県水産加工業者など「断固反対する」と表明しました。JA福島中央会、福島県旅行業協会も不満を示し、多くの内外市町村も反対を表明しました。

しかし、第一原発がまたがる大熊町、双葉町は復興を促進するため早く汚染処理水を処分して欲しいとの要望もあることを忘れてはなりません。

ここで重大なことがあります。それは自民・公明両政権と東電は15年8月、関係者の理解なしには処理水を処分しない、と文書で県漁連に伝えていました。

関係者は怒り心頭。つまり政府・東電は約束を反故にし、大嘘をついたのです。重大な問題です。

時の政府は手法を変えあちこちでこの手を用い、東電は賠償等で約束したことをきちんと履行していないのです。実に不誠実です。

“風評被害”という摩訶不思議で捕まえどころのないことばがありますが、海洋放出は確実に甚大な実害をもたらすでしょう。漁業関係者もやっと販売を盛り返してきたのに、なぜこのタイミングなのだと怒っています。

福島全体に及ぼす影響は計り知れず、暗い影を投げかけ、まるで“フクシマは死ね”といってるように聞こえます。

ちなみに、ではお前ならどうするのだと問われたなら、技術的に解決するまで続けてタンクで保管すると今は答えておきます。

 

その他 課題・問題は山積

分断をあおる手法 「核のごみ(原発から出る高レベル放射性廃棄物)」の最終処分、いわゆる「トイレなきマンション」の問題です。

北海道の寿都町と神恵内村が最終処分場として国の「文献調査」に手を挙げました。

国の最大20億円の交付金を当てにしてのことです。そこには過疎化と財政的行き詰まりがあります。そして最終処分場選定を巡り住民同志の軋轢(あつれき)、分断、対立が生じているのです。

これこそが政府が巧妙に仕掛けたわな、戦略なのです。この手法は沖縄の辺野古基地移設問題等でも顕著です。私たちは政府のこの巧妙さを見抜かなければなりません。

フランスのマクロン大統領は2月10日、原発6基を国内に新建設し、更に8基の増設も検討すると明らかにしました。地球温暖化対策と経済成長に必要だということです。日本はどうするでしょう。

東電は第一原発の廃炉費用を8兆円+αと見込みます。膨大な金額です。第二原発廃炉では、消費者も年間100円負担して東電を助ける仕組みです。これは国民を愚弄(ぐろう)していませんか。

その他、問題・課題を挙げれば切りがありません。別な機会に書くことにします。

 

宣教の課題 生活の豊かさと心の豊かさ

双葉郡が原発を導入したのも生活の貧しさ故からでした。勿論反対者もいましたが、事故後彼らも避難せざるを得なかったとは皮肉なことです。

原発が導入された地域は豊かになりました。働く場所ができ、家族を養い、子どもを高校・大学に進学させ、出稼ぎに行く必要もなくなりました。大きな恵みを受けました。でも事故を起こし、全てを失い、故郷を追われたのです。寿都町、神恵内村の現状はそうです。

生活の豊かさを経済面、心の豊かさを宗教面と考えると分かりやすいと思います。そのバランスです。生活の貧しい人にイエスさまを信じれば幸せになりますと言うだけで良いのかということです。

私は地元いわきを始め、双葉郡に仕事場を創り出し提供したいと考えています。福音を伝えると同時に普通の生活ができる環境も整えていきたいと願わされています。地元の人の喜ぶ顔が見たいのです。

 

神社・お寺の崩壊、祭りや踊りなどの休止〜キリストにある新生・再建

震災後神社やお寺さんも避難し、帰還しても社の再建など生活の立て直しがあり、それだけでなく、門徒もほとんどいなくなり、生活そのものが成り立ちゆかない状況です。

祭りや踊りなど伝統行事もできなくなり、休止・壊滅状態にあります。つまり今まで育て継続してきた地域コミュニティーの崩壊です。人々は生活の基盤だけでなく心の拠り所も失ってしまったのです。

私はキリストにある地域の人々の生活と心の拠り所の新生・再建を願い、取り組んでいます。その大きな一歩・基盤が双葉希望キリスト教会の設立です。ここを中心に双葉郡全体にキリストにある希望を伝えてゆきます。

 

終わりに グッドニュース 

まだまだ書きたいことは山とあります。本を書きたいとも願っています。

最後にグッドニュースです。福島県は21年6月、県外から原発周辺の12市町村に移住する世帯に最高200万円、企業を伴えば同400万円を支給する制度を開始すると発表しました。条件は5年以上住むことです。双葉郡に来てください。宣教の希望に溢れています!!

(※連絡先 住吉 携帯 090-3980-1014)

 

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