『わたしが「カルト」に? ゆがんだ支配はすぐそばに』
日本キリスト教団出版局
齋藤篤、竹迫之著
四六判136頁、1650円税込

『わたしが「カルト」に?』(日本キリスト教団出版局)の2人の著者はカルトからの脱会者。現在は日本基督教団の牧師でカルト問題連絡会のメンバーだ。

齋藤篤さん(仙台宮城野教会牧師)は少年期、父親が借金を抱えて蒸発し何もかも失った。この世界に対する怒りに駆られ、どうしたら誰もが幸せに暮らせるようになるのかと本を読みあさった。中学1年生のとき『ノストラダムスの大予言』を読み、聖書の言葉が引用されていたことから聖書に関心を持った。そこに訪ねてきたのがエホバの証人だった。

「この世界は悪魔によって支配されているから、悪魔によってさまざまな悪事が引き起こされているのだと。わたしにとって愛ある神が伝えられることよりも、父やこの世界に対する怒りに対して悪魔の存在を提示される方がより納得がいったのです。そして、悪魔の働きをすべて滅ぼす『エホバ神』の存在を知ることになります」

エホバ神を知る唯一の道は、エホバ神がただひとつの経路としたエホバの証人の組織(ものみの塔聖書冊子協会)から、聖書を学び続けることだと教えられた。3年間の学びの後バプテスマを受けた。

だがエホバの証人では禁じられていた大学進学を希望したため、長老から「神の裁きを受けてもいいのか」と精神的な圧力を受けるようになった。組織から離れ大学へ行ったが、しっかり身にしみこんでいた「滅び」や「神がわたしを裁いている」との意識がつきまとったという。やがてキリスト教会に出会い牧師に相談したが、エホバの証人時代に「教会とは、悪魔の巣窟のような場所」と教えられていたため恐怖で礼拝に参加できなかった。組織に従順なら愛されるがそうでなければ滅びる、と恐怖心で縛るのはカルトの心理操作の常とう手段だ。

竹迫之(いたる)さん(白河教会牧師)は大学受験の帰り「映画を見て人生の勉強をする社会人サークル」に誘われ、映画見放題のビデオセンターに通うようになった。宗教団体であることには気づかなかったという。

「聖書を知らないと映画もよくわからないよ」と説得され、統一協会の教義を解説するビデオを見せられた。聖書に触れたことがなかったので「そういうものか」と素直に見続けた。

「3か月もすると『教義』でアタマが完璧に仕上がっている状態になりました。そして誘われるままに『合宿』に参加しました。それはマインド・コントロールを一層強固にする仕掛けに満ちたイベントでしたが、…今の時代を生きているということは、歴史に選ばれた証拠なのだ! ということをいろいろな方法で説明されました。高揚感でいっぱいになったわたしは…統一協会のいうメシアの存在を信じるようになっていました。宗教に触れた経験が全くなかったため、『免疫』もなかったのだと思います」

本書では2人が、カルト問題の「今」、「カルト」とは何か?カルト被害防止のために、の3部構成で、身近にあるカルトの「ゆがんだ支配」を解き明かす。

 

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