英国の神学者ピーター・テイラー・フォーサイスの研究者で、東日本大震災後、「現場の神学」を実践と共に探求する著者による翻訳、解説、論考を集めた。
フォーサイスの神学説教「聖なる父」は、「父なる神」を「人間的な『父』の水準以下」としてみてしまうことに警告を発し、神の聖性に注目する。神の聖性は十字架の上で示される。その聖性が「モラル(道徳/建徳性)となり、「十字架の社会主義」となる。
著者は、スペイン風邪のパンデミックや第一次世界大戦があったフォーサイスの時代と、現代とを重ねる。パンデミックや大災禍で問題となったのは「死の情報化」であり、それに抗(あらが)う手段として礼拝や葬儀を提示。 フォーサイスが「危機の中で十字架のモラルが必要になる」と語ったことに注目し、その核心となる「キリストの沈黙」を表現する葬儀の可能性を追究する。

『聖なる父 ― コロナの時代の死と葬儀』
川上直哉著・訳、ヨベル、1,210円税込、新書版

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