この本は、牧会の中で漠然と感じている思いを代弁するように始まっています。「聖書は、クリスチャンとして生きる上で必要な知っておくべきすべてのことを教えていると主張していながら、『心理的』問題をもった人を専門的援助の資格をもった専門家(例えば、聖書の領域外にある理念の訓練を受けたカウンセラー)のところに送るのだ。…霊的問題を扱う時のみ聖書を調べる。これは正しいのだろうか。」
著者は『教会の働きとカウンセリング』(いのちのことば社、1993年)の執筆者であるラリー・クラブ博士。原著の発行年は1987年。博士のカウンセリング理念を知ってほしいという訳者の思いがあって翻訳出版の運びとなったとのこと。心理学用語には訳注もついていて、理解の助けになっています。
聖書をすべての拠り所とする博士は、カウンセリングで重要なのは、方法や技術ではなく、そもそもの人間理解だと明言しています(もちろん専門家によるカウンセリングを否定しているわけではありません)。「カウンセリングは、神との敗れた関係を修復することを目的にしなければならない。この関係修復は、悔い改めを促すことによって実現する。悔い改めは、神を心底喜び、素直に神に仕えるように人を導く」と。
読み進むにつれ深く深く自分のうちにあるものが探られます。「人は防衛的であり、尊大である。そして、脅威を抱きやすい」ということを知っている博士らしく、受け入れやすいように丁寧に説明して、簡単に結論付けません。しかし、遂にはイエス・キリストによる完全な救いと回復を確信する喜びへと導きます。「人生の問題のすべてに対する答えは、キリストとの関係の中にある」、心から同感。さらにこの喜びにあふれて、主にある兄弟姉妹と共に生きることを大いに励まされます。それを体験したい方、ぜひお読みください。
(評・丸山園子=日本同盟基督教団習志野台キリスト教会牧師)

『ひとを理解する なぜ、ひとは、関係を熱望するのか』
ラリー・クラブ 著、
川島祥子訳、ヨベル、
1,980円税込、A5 変

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