河村従彦先生の『ボクはこんなふうにして恵みを知った』という本が出版されました。私自身も、牧師家庭で育ち、三人の娘を育て、クリスチャン二世、三世の、自立・信仰継承について、いろいろ悩んで来ましたが、もっと早く、これを読んでいれば…と思うところが多々ありました。
ひとりの女子大学生が洗礼を受けるか否かで悩んで相談に来られました。信者である両親と祖父母との相克を懸命にとりなして来た彼女にとって、洗礼を受けることは、祖父母を捨て、両親の側につくことであり、また、両親がクリスチャンであるゆえに抱えてきた悩みや彼女なりのキリスト教批判を鞘(さや)に納めて(降伏して)、両親の軍門に下ることになる…というその揺れる思いを聞かせていただきました。「それで、どうしたいの?」とたずねると、長い沈黙の後、彼女が出した結論は、「洗礼を受けて、親とは違う生き方をする」というものでした。そのことばを心の中で繰り返しながら、二世にとって、信仰継承と自立とは、複雑に絡み合った微妙な問題であると感じました。
著者は、この本の中で、信仰継承とキリスト教環境で人格形成をした二世、三世の自立の問題を非常に丁寧に取り扱っています。時々、ドキッとするような質問、「オレって本当にクリスチャン?」「中高生問題って、部活なの?」と問いかけながら、「キリスト教環境で育った人は自立しにくい」という、私たちが容易に受け入れることができない現実を、実に丁寧に、明快に分析して説明してくださっています。また、一世と二世、二世と三世は信仰体験の表れ方が違うけれども、イエス様に出会ったという本質には変わりがないことを語り、「ガーンより、ジワーッが効く!」「問うてみれば返事がある!」と励まし、「リエントリーしたい教会か?」と教会にも反省を促すことを忘れません。さらっと読めますが、内容は濃くて深い一冊です。
(評・木田惠嗣=ミッション東北・郡山キリスト福音教会牧師)

『ボクはこんなふうにして恵みを知った クリスチャン・ホームのケース・スタディ』
河村従彦著、
いのちのことば社
1,540円税込 B6判

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