混迷の2020年だったが、年末年始に感性を養い、信仰への気づきをもたらしたい。『絵本へのとびら』(大嶋裕香、教文館千100円税込、四六変)の著者は、数々の絵本を通して自身の幼い時代、仕事時代、子育て時代を振り返る。一冊一冊に親や友人、先生、夫、子どもたちとの具体的なエピソードがあり、子育て、家庭生活へのアドバイスがある。著者は地域の児童委員も務める。紹介する絵本は「キリスト教絵本」に限定しないことも特徴だ。具体的な生活の課題を共有することを通して、教会と地域がかかわる可能性も示される。


『ベートーヴェン 一曲一生』(新保祐司著、藤原書店、2千750円税込、四六判)の著者は、内村鑑三を敬愛し、クラシック音楽に造詣の深い文芸評論家。今年生誕250周年を迎えたベートーヴェンを記念する取り組みを模索し、緊急事態宣言下の4月から、一日一曲聴き続けた。その日記風の寸評と、全体の評論がある。内村の「義は美以上。しかし義は美を退けない」「日本人は浅い民」といった言葉を引用し、ベートーヴェンの音楽の特徴となる「義」や「深さ」を強調。著者は主に保守論壇で活躍するが、本書では「日本」に執着していない。ポストモダンの風潮に対し、西洋近代の精神性、理性に向き合うことを促している。


「JOY! JIREH~ALL I NEED 」(JIREH[ジャイラ]、2千200円税込、全7曲、ミクタムレコード)で演奏されるウクレレには、しっとりとしたクラシック、ジャズのテイストがある。ジャイラはまだ16歳だが、すでに10代のコンテストで高い評価を受けてきた。「戦場のメリークリスマス」ほか、オリジナル曲、長沢崇史氏、小坂忠氏のワーシップソングなどのアレンジ。「この才能を何のために用いるか、表現の目標をしっかりともっている。将来を期待して大切に育てたい」と言う小坂氏の言葉もうなづける。

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