日常から離れ、神が創造された自然を近くに感じ、信仰を深め、様々な決心の場となってきたクリスチャン・キャンプ場。本来夏は青少年のキャンプが目白押しだったが、今年はコロナ禍で多くがキャンセルとなった。経営的にも大きな打撃となっている。本紙では紙上とオンラインを組み合わせ、連載で各地のキャンプ場に思いをはせる。その第十回目。

 前回→ ○キャンプと創造⑨ 仲間と出会う 奥多摩福音の家2020年10月29日

―関西有数の避暑地、岡山県真庭市の蒜山高原に、蒜山バイブルキャンプがある。数年前からクリスチャンではない人々にも門戸を開き北欧風の建物が親しまれている。コロナ禍においても新たな利用の仕方を見出しているという。チーフ兼チャプレンの大橋道也さんに聞いた。

 

北欧風の施設が一般客にも好評

 

大橋 元々西日本福音ルーテル教会の母体となるノルウェールーテル伝道会が1965年に開始した施設です。利用者をクリスチャンのみに限定していましたが、私が着任した7年前、「夏以外に開放しないのはもったいない」と思い、一般にも利用を広げました。それまで近所の人からすると、「関係のない施設」と思われていました。利用者も阪神や岡山市方面が中心。一般に開放してからは、だんだんと旅行で利用していただいたり、近所に帰省した人の利用などがあります。

―元からあった北欧の家具などを生かし、施設を洗練させていった。

大橋 部屋に入ると皆さん歓声が上がります。照明も暖色にし、レトロカフェのような雰囲気を出してみました。ブックカフェのように本を揃えてラウンジでくつろいでいただけるようにしています。

 

個人との丁寧な接客に本来の在り方思わされ

 

―今回の新型コロナウイルスの影響で、3月から毎年のリピーターが軒並みキャンセルとなった。夏も教会関係の団体客は来られなかった。

 

大橋 団体はキャンセルしたのですが、夏前から家族連れや少人数の友だち同士、個人のリトリートなでの利用が増えてきました。経済面では比較にはなりませんが、利用の仕方が変わったという実感があります。

―通常大橋さん夫婦2人で施設を管理。夏にはバイトを募っていたが、今年は2人で乗り切った。

 

大橋 かつて教会単位で来ていたという人が「今度は主人と来ました」と言ってこられたり、孫や家族とともに利用されることがありました。今まで団体のプログラムの流れに沿って分刻みで、流れ作業のように動いていました。ちょっとした声掛けの余裕もありませんでした。しかし、少人数の利用でお客さんがスタッフとも話す余裕があります。理事会でも話し合ったのですが、「バイブルキャンプの本来の目的を考えると、団体が嵐のように来て過ぎ去るよりも、ゆっくり丁寧に接客することの方が合っている」という声がありました。コロナ禍の中ですが、この面は肯定的に受け止めています。

 

―9月にはホームページをリニューアル。教会関係ではない人にも見やすくすると、一般の利用者も出始めた。

大橋 特に女性の一人旅の方が目立ちますね。

 

水と空気が違う

 

―関西を代表する避暑地である蒜山高原は自然が豊かだ。バードウォッチングや山菜採りを楽しむ利用者もいるという。近くにはマラソンコースやサイクリングロードがある。

大橋 水と空気が都会と違う。近くの塩釜冷泉は、名水百選に選ばれています。その名水が蛇口をひねれば出てきます。コーヒー一杯でも味が違います。牧場も多くアイスクリームを目当てにやってくる方々も多いですね。また地元のやつか温泉の他に、湯原温泉郷、関金温泉、三朝温泉など、四方八方の温泉地に囲まれています。冬は豪雪地帯で毎朝雪かきから始まります。ただこの2、3年温暖化で雪も減り、スキー客に影響が出ています。平野部では豪雨の甚大な被害がありましたが、こちらの方では直接的な被害はありませんでした。

 

―様々な教派で利用される。イベントも催し、利用客も広がった。

大橋 当初は福音派の利用が多かったのですが、最近は日本基督教団やペンテコステ派の方々の利用もあります。近くにはカトリックの研修所があり、以前神父の方々のカンファレンスがあった時に、蒜山バイブルキャンプも会場として提供させていただくなど交流があります。利用者については、宗教問わずにゆっくり過ごしてもらうことを大切にしています。ヘンリ・ナウエンなどの読書会、黙想会などの定期集会、星をみる会やコンサートは随時開催し、島根、兵庫の方からも毎回楽しみに来てくれて、泊りがけで参加してくださいます。

 

祈りの課題

大橋 宿泊施設として利用していただく形が一番のサポートとなります。いろんな方にオープンしていますが、やはり、さらにクリスチャンの方にも利用してもらいたい。修養会やキャンプで使う場所だという先入観があるかもしれませんが、個人でも利用できます。物理的に日常生活を離れ、また日常に戻っていく。リトリート、リフレッシュの場所として用いていただけるように願っています。

 

 

蒜山バイブルキャンプ https://hiruzenbc.com/

 

 

関連記事

キャンプと創造⑨ 仲間と出会う 奥多摩福音の家2020年10月29日

キャンプと創造⑧ キャンプ宣教はまだまだ必要 松原湖バイブルキャンプ2020年10月25日

キャンプと創造⑦ 今まで出来なかったこと、集まってこそできること 奥多摩バイブルシャレ―2020年10月2日

連載 キャンプと創造① 「今だからできる新しいこと」 シオン錦秋湖2020年8月7日

キャンプと創造② 「コロナ禍だからこそできる用いられ方」 オアシスセンター キリスト教森郷キャンプ場2020年8月20日

キャンプと創造③ 自然の中で神様に近づく 日本バイブルホーム2020年8月28日

キャンプと創造④ 教会、地域の持続可能性と共に 青森・青森クリスチャンセンター2020年9月4日

キャンプと創造⑤ 寝食を共にし、御言葉に扱われる経験の価値 新潟 聖ヶ丘バイブルキャンプ2020年9月11日

キャンプと創造⑥ 椿、火山、海の雄大な景色 大島・いずみのいえ2020年9月18日

クリスチャン・キャンプ場 コロナ禍で運営危機 祈り続ける輪を広げて クラウドファンディングサイトに各祈祷課題2020年7月11日

「プレイ・フォワード~明日へつなげる、祈りと支援」 映像・音楽でキャンプ場支援2020年6月13日

キャンプと創造⑨ 仲間と出会う 奥多摩福音の家2020年10月29日

 

ウェブ版→ http://クリスチャン新聞.com/csdb/

★「クリスチャン新聞福音版」が、2019年4月号からリニューアル!

デザインを一新し、モダンで読みやすい紙面に。中面もカラーになり、

全頁フルカラー。新連載もスタート。

試し読みも↓

https://クリスチャン新聞.com/fukuinb/renew/